お嬢さま至上主義

とあるポンコツギャルゲーマーの日常です

単調なはずだった毎日に 絵に描いたような分かれ道

甲児くんとカイザーさんの365日

8/28『たまひよこっこ』

 

今年で娘ちゃんが二歳になるという職場の先輩から、育児関係の雑誌のバックナンバーを譲ってもらった甲児くんは、食堂の隅っこでカイザーさんの愛妻弁当を食べつつ、パラ読みしていた

そこにZがやってきて、「おー、相変わらず料理うまいのぅあいつ」とか言いながら、だし巻き玉子をつまもうとするので、目線は雑誌に落としたまま「食うなよ」と悪さをする手を叩き落とした

ぶー、と頬を膨らませながらも隣に腰掛け、熱々の緑茶をすするZが手元を覗き込み「子育ての本かいな」と話しかけてくる

「そろそろ勉強しといた方がいいと思ってな」「ええ心掛けやんけ。教育方針とか決めたんか?」「いや、それはまだ…俺もあいつも、のびのび育ってくれれば、それでいいと思ってるしさ」「せやなぁ…甲児くんはテキトーなとこあるし、妹ものんびりしとるしなぁ」と、とりとめのない話に花が咲く

「ま、どっちに似たってええ子になるんは間違いない。ワイが保証したるで!」と、無駄に偉そうなZに、甲児くんも「そこは俺も心配してないよ。何てったって、掛け値なしに宇宙一の母親に育てられるんだからな」と笑った

そんな甲児くんの手元には、カイザーさん渾身の彩り豊かで栄養バランスも完璧、もちろん味も見た目も百点満点中百五十点な愛妻弁当がまだ半分以上も残っていて、午後からの活力の礎となってくれるのだった

 

 

 

なんか突発的に甲児くん×カイザーちゃんの学パロ話がしたくなったので、する

 

 

 

高校一年生の二学期分をたっぷり使った両片想いの青い日々が報われ、ようやくお付き合いすることになった甲児くんとカイザーちゃん

クラスメイトだけでなく同学年の生徒や先輩たちから祝われたり(主にカイザーちゃん)呪われたり(こっちは甲児くん)しながらも、幸せいっぱいな三学期を過ごした

でも、未だにカイザーちゃんの過保護なお兄ちゃんズには、甲児くんの存在は内緒にされていた

 

そんな春休みのこと

どうしても甲児くんとおうちデートがしたくなったカイザーちゃん

お外でのデートも楽しいんだけど、おうちだと何に気兼ねすることもなくのんびりとおしゃべりできるし、お金もかからない(甲児くんちはご両親が海外にいて、いろいろ大変そうだと知ったので)し、それに恋人ができたらお部屋に招くというのが、カイザーちゃんの密かな夢だったのだ

お気に入りのぬいぐるみを見てほしいし、お気に入りの茶葉でお茶も淹れてあげたい(料理ができないカイザーちゃんが唯一できるのが、お茶を淹れることだった)

平日ならお兄ちゃんたちもお仕事で家を空けるし、チャンスがあるかなと思っていたのだけど…なぜか春休みに入ってからというもの、お兄ちゃんのどちらかが決まって日中の、しかもランダムなタイミングで家に帰ってくる

これじゃあ、おちおち甲児くんを家に呼べない…と困るカイザーちゃん

…そう、実は既にお兄ちゃんズには、我が家の至宝である妹に悪い虫がついているということがバレていたのだ!

万が一、家という密室の中で二人きりになり、まだ見ぬクソガキが悪い虫から狼にランクアップしないよう見張るという目的で、お兄ちゃんズは交代で定期的に自宅のパトロールをしていた

根っから素直で隠し事が苦手なカイザーちゃんは、甲児くんとお付き合いし出してからこちら、毎日幸せオーラを撒き散らしていた

それは学校でも、家でも同じこと

ふにゃぁ~とした笑顔でスマホを眺め、時折クッションを抱き締めてソファの上を転がっていたりもするし、部屋の扉が少し開いているのにも気付かず、お友達に電話で惚気話を聞かせていたりするものだから、そりゃあバレないはずがない

抹殺対象の名前が「こうじくん」ということまでお兄ちゃんズには筒抜けなんだけども、カイザーちゃんはまだその事実を知らない…

 

その頃、甲児くんも毎日が幸せでたまらなかった

こちらは別に家族に隠す必要もないので、弟とおじいちゃんには彼女ができた報告をしたのだけど、どんな娘か見たいとせがむ弟に一緒に写ってる写真を見せたら、なぜか無言になられた

でも、おじいちゃんが「良さそうな娘さんじゃないか、大事にするんじゃぞ」と言ってくれたので、甲児くんは全身全霊で大事にすると誓いを新たにした

なお、弟には(彼女って…小学生…??アニキってロリコンだったの…??)と盛大に誤解され、しばらくの間、ずっと誤解されたままだった

 

さてさて、不器用なカイザーちゃんから丸一日留守にする日はないのか、とストレートな質問を繰り返されるようになって、どうやら噂の「こうじくん」を家に呼ぶつもりだとあっさり看破したお兄ちゃんズは、策を講じることにした

まず次兄が「そういえば、今週の日曜日は接待ゴルフの予定が入ってて、朝から晩まで出掛けなきゃいけないんだよね」と嘘の予定を口にし、ついで長兄が「そういや、そうやったなぁ。めんどくさいけど、仕事やからしゃあないの。ほなけど、カイザーちゃんを一日中ひとりにするんは心配やなぁ」と嘘を補強しつつ、さり気なく人を呼ぶよう仕向ける

これまで二人とも接待ゴルフなんて一度も行ったことないのに、いい子のカイザーちゃんはお兄ちゃんの言うことを信じて、大丈夫だよ、お友達呼ぶから!とニコニコ笑顔だ

お兄ちゃんズも、それなら安心だ、と企みを内に隠して朗らかに応じた

 

そして、当日

噓予定の通りにいったん家を出たお兄ちゃんズは、その辺のコインパーキングに車を停めると、家まで引き返してガレージの中に隠れた

そうとは知らないカイザーちゃんは、ウキウキで甲児くんを最寄り駅まで迎えに行く

(ちなみに二人の家は学校を挟んで反対側にあり、甲児くんち、学校、だいぶ離れてカイザーちゃんの最寄り駅、カイザーちゃんち、の並び)

最寄駅から彼女んちまでバイクを押して歩きながら、今日のお兄ちゃんズの予定をカイザーちゃんから聞かされる甲児くん

「帰ってくるのは夜の九時を過ぎるって言ってたから、晩ごはんも一緒に食べられるね」と嬉しそうなカイザーちゃんに、甲児くんもつられて笑う

なかなかにデカい彼女の家に驚きつつ、玄関の鍵を開けたカイザーちゃんが「さ、どうぞ」と扉も開けてくれて…

「「いらっしゃ~い」」と二重に聞こえた声に、二人して固まった…

お兄ちゃんズはカイザーちゃんが駅の方に向かったのを確認してから家の中に入り、ずっと玄関で待ち伏せしていたのである

「な、なんでいるの~!?」「いやぁ、それが急に大雨になってゴルフが中止になってしもてなぁ(嘘)」「雨なんて降ってないよ!?」「ゴルフ場がある地域は、今ゲリラ豪雨で大変なんだよ(大嘘)」「え、えぇ~!?」とビックリ仰天なカイザーちゃんだったけど、そこでようやく、そうとは知らずに甲児くんを連れてきてしまったことに思い至って、「えと、えと、甲児くんは彼氏じゃなくて、お友達で…」と、墓穴を掘り気味に紹介しようとした

…んだけど、いきなりの「伝説」との遭遇で呆然としてしまっていた甲児くんが、我に返るや否や腹を括って「初めまして、お義兄さん。カイザー…さんとは、結婚を前提にお付き合いさせていただいています、兜甲児です!」と頭を下げた!

「「け…っ!?」」「結婚!?」と、驚く兄妹…カイザーちゃんも初耳だよ、嬉しいけど!

「だ、ダメだよ甲児くん、早く逃げないと…!」と腕を引っ張るカイザーちゃんに「大丈夫だって、まさか取って食われやしねぇだろうし…それに、いつかはきちんと挨拶しなきゃいけないと思ってたんだ」と、安心させるように微笑みかける甲児くん

ほう…なかなか肝が据わっとる若者やんけ、とちょっぴり感心する長兄と、殺気を隠そうともしない次兄は、とりあえず男同士で話がしたい、とカイザーちゃんには自分の部屋で待つように告げる

おろおろするカイザーちゃんだったけど、甲児くんに「待っててくれよ」と言われると、頷くしかなくなる

階段を上り際、振り向いたカイザーちゃんが「お兄ちゃんたち!甲児くんにひどいことしたら、もう一生口きかないからね!」と涙目で言い、お兄ちゃんズはカイザーちゃんの健気さに萌え、罰則のあまりの厳しさに震え上がった

 

居間に通され、一応の礼儀としてコーヒーを出された甲児くんは、それからしばらく二人の兄から厳しい尋問を受けることに

でも、ぎこちないながらも精一杯に丁寧な言葉遣いで、自分がいかにカイザーちゃんを愛しているか、カイザーちゃんとの将来を真剣に考えているかを伝えているうちに、長兄の態度が軟化してくる

次兄は相変わらず、視線で人を殺さんとばかりに睨んでくるけど…

いよいよ追究は核心へと迫る…「で、お二人さんはどこまで進んだんか?」と聞かれ、甲児くんは(きた…!)とゴクリと唾を呑む

ここまでのやり取りと二人の雰囲気から、下手な嘘や誤魔化しは絶対に通用しないことがわかっていたので、覚悟を決めて「…手を、繋ぎました」と白状する

事と次第によっては(たとえ最愛の妹に恨まれようとも)無傷では帰せない、とまで考えていたお兄ちゃんズだったけど、その答えには拍子抜けして「…はい?」「…なんて?」と聞き返す

その後、何度も確認して、本気でそれ以上の接触はしていないことを確かめると、思いきり脱力した

けど、そこでハッと何かに気付いた次兄が「それって、うちのカイザーちゃんがあまりに子どもっぽくて、そういう気になれないってこと?カイザーちゃんには魅力がないってこと!?」といちゃもんをつけるも、甲児くんはブンブン首を振って「まさか!そりゃ俺だってしたいですよ!したいけど…なんかカイザー見てると、そういう気分になるのが悪いことみたいに思えて…」と意気消沈する

そうやんなぁ、年頃の男の子なら当然やんなぁ、と甲児くんがかわいそうに思えてきた長兄は「…すまんなぁ。どうやらワイらが過保護に育て過ぎたみたいでな、あの子はいくつになってもガキみたいなとこあんねん」と謝る

甲児くんは笑顔で「わかりますよ、大事に育てられてきたんだな、って伝わります。お義兄さんたちにたくさん愛されて育ってきたから、カイザーはあんなにいい子なんですね」と言うので、長兄は胸をズキューンと射抜かれた

 

約二時間後、ようやく解放された甲児くんがちょっとふらつきながら居間を出ていくのを眺めながら、次兄が「兄さん、ちょっと甘いんじゃないの?」と文句を言ってくる

長兄は遠い目をしてきちんと閉められた扉を見つめ、「何やろなぁ…なんや甲児くんのこと、他人とは思えんちゅーか…どうもワイとあの子は前世ではマブダチやったんやないか、って気がしてきてなぁ…」と、しみじみ言う

次兄は「…何か悪いものでも食べたか、転んで頭でも打った?」と、冷ややかだった

こうして甲児くんは、どうにかこうにか長兄には(それなりに)認めてもらえたのだった

 

気付けばお昼になっていたので、飯でも作るか…と兄弟が料理当番を決めようとしたところに、エプロンをつけた甲児くんとカイザーちゃんがやってくる

「お昼はわたしたちが作るから、お兄ちゃんたちは座って待っててくれたらいいからね」とカイザーちゃんにソファを指差され、ポカンとするお兄ちゃんズ

でもすぐに、箸とスプーンとフォークより重いものを持ったことがないカイザーちゃんを心配し、刃物と火の危険性を熱烈に訴えるも、「へーきだもん、わたしもうそこまで子どもじゃないもん」と聞き入れてもらえない

子ども扱いされてぷりぷり怒りながらキッチンに行ってしまったカイザーちゃんと入れ替わるようにやってきた甲児くんに、「俺が責任持って指導しますから。包丁も今日のところは持たせないようにします。…『いつもごはんを作ってくれるお兄ちゃんに恩返ししたい』って言ってたから、任せてやってくれませんか?」と言われると、二人は揃って目から滝のように涙を流した…

身長が足りないカイザーちゃんが踏み台に乗って、一生懸命に卵を掻き混ぜている様子を、こっそりスマホで写真も動画も撮りまくったお兄ちゃんズ

次兄はもちろん、画像編集ソフトで隣に立つ甲児くんを抹消するのも忘れなかった

カイザーちゃんが初めて作ったオムライスは、卵はぐちゃぐちゃでケチャップライスも味が均等じゃなかったけど、お兄ちゃんズが今まで仕事関係の人と食べたどんな高級レストランや高級料亭の料理よりおいしかった

カイザーちゃんはカイザーちゃんで、優しい家庭の味がする甲児くんの手作りオムライスに、感動しまくりだった

 

午後からは、カイザーちゃんのお部屋でのんびり過ごした

カイザーちゃんのお部屋はどこもかしこもピンク色で、フリルやらリボンやら花柄やらかわいいものに溢れていて、仄かに甘くていいにおいもする、絵に描いたような女の子のお部屋で、甲児くんは俺なんかが入っていいのか…と困った

ぬいぐるみに名前を付けるタイプのカイザーちゃん、夜は一緒に寝てるというぬいぐるみにヤキモチを焼く甲児くん

カイザーちゃんが淹れたハチミツ風味の紅茶を飲みつつ、甲児くんが知ってる中で一番オシャレな洋菓子店で買ってきたお土産の焼き菓子を食べたカイザーちゃん、「これおいしい~!」と喜びながら、三つのうち二つを残す

甲児くんに食べないのかと聞かれ、照れくさそうに「おいしかったから、後でお兄ちゃんたちにも分けてあげようと思って…」と答えるカイザーちゃんのかわいさに、ドアの隙間から覗き見していたお兄ちゃんズは、黙って号泣するという器用なことをするハメになった

そんなカイザーちゃんに、甲児くんは自分の分の焼き菓子を全部あげた

 

夜は昼間のお礼にお兄ちゃんズがごはんを作り、あまりのレベルの高さにヒエッ…となった甲児くんは、もっと精進して料理の腕を磨かないと…と気合を入れ直した

夕飯の後、バイクで帰っていく甲児くんをカイザーちゃんと見送った長兄は、寂しそうなカイザーちゃんの頭を撫でながら「…ええ子を見つけたな。幸せになるんやで」と、そっと囁いて、カイザーちゃんは「…うん。わたし、絶対に幸せになるよ。甲児くんと二人で」と応えた

 

 

 

おまけ

 

高校卒業後、結婚することになった甲児くんとカイザーちゃん

初の親族顔合わせの席で、「甲児の義兄の剣鉄也です、よろしく」と頭を下げる初対面の男性に、はわわわわぁ~…!と胸がときめく次兄

その人のことが気になって気になって仕方なく、食事の後に思い切って話しかけてみると、これまた面白いくらいに話が弾んだ

帰り道、長兄にぼそっと「前に兄さんが言ってた、前世でのマブダチ云々って感覚…僕にもわかったよ…」と告げ、「カイザーちゃんって、ほんとに運命の人と結ばれたんだねぇ…」と、夕陽の眩しさに目を細めた

長兄は実感のこもった頷きを、何度も返したという

 

 

 

お付き合いする前も、お付き合いしてからも、それぞれ違った味わいがある…

学パロは奥が深い