兜一家の仲良し365日
2/13『バレンタイン前日』
もう二月も中盤なのか…と、仔猫の日めくりカレンダーを眺めていたカイザーさんは、チョコの準備に思いを馳せる
そこで、唐突に閃いた
瑠璃ちゃんも三歳になって、だいぶカイザーさんの言うことも聞けるようになってきたことだし、今年は瑠璃ちゃんにもチョコ作りを手伝ってもらおうかな、という閃きだ
リビングで最近お気に入りの日朝アニメヒロインの塗り絵に精を出している瑠璃ちゃんにその旨を打診すると、色鉛筆を放り出す勢いで「るぅもやるー!」と同意された
というわけで、さっそくどんなチョコを作るか、二人で作戦会議だ
家族共用のタブレット端末を操作し、様々なチョコのお菓子の画像を見せながら、瑠璃ちゃんに選んでもらう
真剣な顔をして写真を見比べていた瑠璃ちゃんだけど、ある一枚の画像を見た瞬間に、「るぅ、これがいい!」と笑顔を浮かべた
素朴なチョコの表面に、カラフルなトッピングが施されたそれは、いわゆる平成女児チョコ
これなら簡単だし、瑠璃ちゃんでも失敗することはないだろう…と、カイザーさんも賛成する
一応、包丁や火を使う作業はカイザーさんが担当し、瑠璃ちゃんは主に飾り付けを担当する約束をした
午後、お昼寝から目を覚ました瑠璃ちゃんと一緒に、スーパーで買い出し
「このきらきらしたのとー、こっちのいろいっぱいのとー…」と、自分で考えて必要な材料を買い物カゴに入れていく瑠璃ちゃんの自主性に任せて、見守るカイザーさん
手を繋いで辿る帰り道の途中、瑠璃ちゃんが「あのねー、ままー、るぅもちょこつくるの、ぱぱたちにはないしょにしといてね。びっくりさせたいの!」と無邪気に笑う瑠璃ちゃんに、カイザーさんも人差し指を口元に当てながら「うん、わかった。上手に作って、みんなを驚かせようね」とイタズラに微笑むのだった
ようやくまとまった時間が作れましたので、前々からこねくり回していた甲児さま×カイザーさまを成就させたい女神さまの奮闘記妄想を書き散らす余裕ができましたわ!
このままこねくり回し続けていたら、バターになっちゃうところでしたわ!
こねくり回すうちに若干の設定変更なんかもありましたが、いずれは一つの作品として書き上げたいので、そのプロットとしてここに記しておきますわ~
イヤンなお嬢さまは回れ右してお帰りになってくださいましね~!
全部目を通してから石をお投げになるのは反則でしてよ~!
皆さま、ごきげんよう!
わたくしは全知全能のお父さまより、皆さまがお住いの宇宙の管理を任されております女神ですわ~!
わたくしにはたくさんのお兄さま、お姉さまがいらっしゃって、一人一人が異なる次元の宇宙を管理しておりますが、その中でも末っ子で管理者としての経験に乏しいわたくしは、比較的安定しておりますこちらの宇宙を割り当てられておりますの
大規模な星間戦争も起こっていなければ、宇宙の法則を根幹から乱れさせるような超兵器の開発にも成功していない、それはもう本来なら管理の必要もないくらいに平和な宇宙なのですが、万が一の事態を想定して、わたくしはこちらに常駐しておりますのよ
そのような状況ですから、管理といっても特にやることがなく、わたくしは日がな一日、太陽系第三惑星の地球…中でも日本において目覚ましい発展を遂げている漫画やアニメといった娯楽を存分に観察させていただいておりますわ
推し活はリリンが生み出した文化の極みですわ、間違いないですわ…
今日も日課のシエスタを楽しみました後、録画しておいた昨夜の深夜アニメを視聴しようと考えていたのですが…
わたくしを起こしたのはあらかじめセットしておいたアラームではなく、宇宙の危機を告げる特大アラートでしたの…!
め:な、何事ですの~!?じいや、じいやはどこ!?
じ:お嬢さま、じいならここで待機しておりますぞ。
め:あ、じ、じいや!大変ですわ、何だかとっても大きな音が鳴っておりますわ!何ですの、これは!
じ:旦那さまからレクチャーをお受けになっていたでしょう…これは宇宙消滅の危機が迫った時に鳴り響く、アポカリプティックサウンドでございます。
め:…は???ど、どういう意味ですの…???
じ:端的に申しますと、このままではお嬢さまがご担当なさっている宇宙が終焉を迎えるということです。
め:な、ななな、何でですの!?昨日までそのような兆候は一切ありませんでしたわ!惑星単位でならともかく、宇宙を丸ごと破壊できるような脅威なんてどこにも確認されませんでしたでしょう!?別次元の宇宙からの侵略者だって、事前にお兄さまやお姉さまから通知があるはずですわ!
じ:ですが、非常警報が鳴っている現実は真でございます。調査の必要がございましょう。
め:言われなくてもですわ!今期の冬アニメだって盛り上がってきたところですのよ!こんなところでこの宇宙をダメにしてしまうわけにはいきませんわ!
そんなこんなでさっそく調査に乗り出したわたくしたちは、それこそ太陽系第三惑星・地球の周回軌道上に、謎のロボットを発見したのですわ
め:…ロボット…ですわよね??
じ:じいの目にも、そう見えますが…
め:…泣いてますわね…
じ:号泣なさっておいでですな…
め:あれがわたくしの宇宙を、サブカルチャーごと吹き飛ばそうとしている元凶ですの…??
じ:旦那さまよりお借りしております未来予測機によりますと、そのようですな。こちらの観測装置も、数値化できないほどのエネルギーを計測しております。
め:そんな気配はありませんけど…
じ:もう少し調べてみましょう。情報を集めれば、未来の予測もより正確なものになりますので。
そうしてわたくしたちは、そのロボットにゆっくりと近寄っていったのですわ
すると、彼女(?)の泣き声が鮮明に聞こえてきましたの
め:同じ単語を繰り返していますわね…こ、こ…コージクン…?じいや、コージクンとは何かしら?
じ:恐らくは人名でしょうな。
め:そのコージクンとやらが、泣いてる原因というわけですわね?何者なのか、調べてちょうだい。
じ:は、かしこまりました。しばしお待ちを。…該当する人物が多すぎますな。お嬢さま、少々お時間をいただきます。
め:そんな悠長にしていて、大丈夫なのかしら…?
じ:そうですな…でしたら、お嬢さまのお力でしばし時間停止をお願いできますかな?
め:あ、そ、そうですわね!わたくしとしたことが、すっかり忘れておりましたわ!宇宙の時間さえ止めてしまえば、今より自体が悪化することはございませんわ!ええと…停止ボタンは…あ、これですわ、ポチッとな~♪
じ:…
め:…
じ:…おや?
め:おかしいですわ!?何であれは止まりませんの!?
わたくしがお父さまより賜った管理者七つ道具のうちの一つ、時間停止ボタンを押したというのに、ロボットの泣き声は変わらず響き続けておりますの
見下ろす地球の雲の流れはピッタリ止まっているのですから、装置の故障ではないはずなのに…
め:じ、じじじ、じいやどうしましょう!?宇宙が木っ端みじんになっちゃったら困りますわ、日本にはまだ完結していない漫画が山のようにありますのよ!それらが全部未完になってしまいましたら、わたくし今夜から眠れませんわ~!
じ:落ち着いてください、お嬢さま。何も今すぐ宇宙がどうにかなってしまうわけではございません、まだいくらかの猶予はございます。…こうしましょう、アラートが鳴り出した時間に絞って検索すれば…ふむ、該当する人物が出てまいりましたぞ。
め:でかしましたわ、じいや!どれどれ…あ、わたくしこいつ知ってますわ!日本でドタバタやってる奴らの一味ですわね!あの騒動がエンタメ業界の制作にどこまで影響するか、気になってはいましたの。
じ:そのようですな、お嬢さま。
め:で、そいつがどうかしましたの?
じ:どうやらお亡くなりになったようでございます…
め:は~…そうなんですの…ご愁傷さまですわ。それで、何がどうなって宇宙の終焉と繋がりますの?
じ:それに関しましては…む、出ましたぞ。未来予測によれば、彼の死を嘆き悲しむあまり、あのロボットが自身の感情を制御できなくなって、溢れ出たエネルギーによりこの宇宙一帯が跡形もなく消し飛ぶようですな。
め:…ヤベェじゃありませんの…
じ:ヤベェでございます。
め:でも、それなら話は簡単ですわね。そいつを生き返らせればいいのでしょう?この時間巻き戻しボタンを押すだけで、万事解決ですわ!ポチッとな~!
とりあえず時間を一時間に設定して、全宇宙の時間を巻き戻しましたわ
そうすればコージクンも生き返り…というよりも、彼を含めた時間軸が死ぬ前まで戻るわけですから、あのロボットがギャン泣きする理由もなくなるということですわ
…ほら、もう泣き止みましたわね
ふふふ、不思議そうにキョロキョロしてますわ
何が起こったかわからないのでしょうね、これでも神であるわたくしの偉業に恐れ戦き、ひれ伏すがいいのですわ~!
オーホッホッホ~!
…しかし、その一時間後…
め:…あら?またお亡くなりになりましたわ…??
じ:…と、いうことは…
め:あぁ~!またアラートが大音量で鳴り始めましたわ~!も、もう一回!もう一回やり直しですわ!
じ:お願いいたします、お嬢さま。
…以上の一連の流れを三十回ほど繰り返した後、わたくしは何かがおかしいと気付きましたわ
め:おかしいですわ、じいや…どうして同じことの繰り返しになりますの…??
じ:…お嬢さま、こちらがコージクンの詳細でございます。ご覧ください。
め:ふむ…む?ここ…このタグ一覧のところ…主人公タグがありますわ。つまり、コージクンは主人公なんですのね。
じ:左様でございます。ですがお嬢さま、彼には主人公タグと対になっているはずのタグがございません。
め:対になる…??それって…ラッキースケベ…!?
じ:お嬢さま、ラブコメ漫画の読みすぎでございます。
め:ち、違うんですのね…ええと、ええと…あ、ラキスケタグはありますわね…ないもの、ないもの…あ。
じ:そうです、お嬢さま。彼には主人公補正タグがないのです…!
め:何てこと…主人公の境遇を経験するのに、補正がなければそりゃ死にますわね…
じ:しかも主人公でございますので、彼の人生に介入できる割合はかなり限られてまいります。
め:どういうことですの?
じ:彼の人生は脚本通りに進むということです。脚本から大きく外れた行動は取らせられません。例えば、彼の死の原因となった出撃そのものをなくすことは不可能ということです。
め:え…では…??
じ:主人公補正がないまま、主人公としての責務を全うさせなければならないということです。
め:え…えぇぇ~!?!?!?わ、わたくし女神ですわよ!?女神の権能よりも脚本家の影響力がデカいということですの!?
じ:それとこれとは別の話ということでございます。
め:はぁぁぁぁ~!?!?!?
じ:お嬢さま、はしたのうございますよ。…もう一つ、悪い報告がございます。
め:…言ってごらんなさい。
じ:このままコージクンが死に続けますと、あちらのロボットのカルマ値がどんどん上昇していきます。
め:もう響きからして嫌な予感しかありませんわね…で、そのカルマ値とやらが上昇し続けると…どうなりますの?
じ:宇宙が滅びます。
め:ですわよねぇ~!?理由はよくわかりませんけど、コージクンとやらが死ぬと悲しくて悲しくて宇宙をぶっ壊してしまうんですものね~!?そんな大切な存在が、死んだと思ったら生き返って、生き返ったと思ったらまた死んで…そりゃあ頭もおかしくなりますわよね~!?
じ:早急に現状を打破しないと、取り返しがつかないことになりますな。
め:推し活の危機ですわ~!?
こうなったら、どうしてあのロボットが時間停止や巻き戻しの対象にならないのかを調べている時間はありませんわ!
それよりも、補正なしのコージクンにどうやって主人公の役割を全うさせるかが大事ですわ!
わたくしとじいやは、うーんうーんと頭を悩ませますわ…
め:あ、思いつきましたわ!補正がないなら、生やせばいいのですわ!
じ:駄目です、お嬢さま。コージクンのタグには外部から書き換えられないよう、ロックがかかっております。
め:はぁ!?どこのどいつの仕業ですの!?
じ:じいやにもわかりませんが…もしかすると、補正を奪ったのもそやつの仕業なのかもしれませんな。
め:な、なるほど…普通なら、主人公と主人公補正はセットですものね…何をやらかしましたら、補正タグのみ剥奪されるなんて極悪な刑に処されますの…
じ:補正の追加が無理でしたら…
め:幸運タグの付与も無理ってことですわよね…知性や運動能力もこれ以上いじれない…となると…こちらを上げるのが無理なら、あちらを下げるしかありませんわ!
じ:お嬢さま、冴えていらっしゃいますな。
め:ふふん、もっと褒めなさい。敵を片っ端からドアホにしてさしあげますわ!
じ:お嬢さま、口がお悪うございます。
…五分後…
め:こちらも操作を受け付けませんわ~!?!?!?何でですの~!?!?!?
じ:むぅ…強固なロックですな…このじいに、突破のきっかけすら掴ませないとは…
め:ええい、何か…何かできることはありませんの…!?
(ちなみに今は時間を十年ほど巻き戻して、コージクンのXデーを先延ばしにしていますわ!例のロボットも、ちっこいコージクンを興味深そうにガン見していて、気を逸らす効果も発揮しているようですわ!)
め:…結局…いろいろやってみて…わかったのはバタフライエフェクトぐらいしか干渉する術がないということですわね…
じ:コージクンが危機を乗り越えられるまでには、途方もないトライアンドエラーが必要になりましょうな…
め:んも~…行ってらっしゃいな、わたくしのちょうちょさん…
それから…
め:あぁ~!また死にましたわ!これで何度目ですの!?
じ:お聞きになりますか、お嬢さま?
め:聞きたくもありませんわ!わたくしも頭がどうにかなってしまいそうですわ!失敗の度に時間を巻き戻しておりますから、冬アニメの続きも週刊漫画雑誌の続きも見られませんのよ!国民的ゲームにして、ご長寿ナンバリングタイトルの新作だってお預けですわ~!…あら、そういえば。
じ:どうなさいました?
め:あのロボットのカルマ値はどうなりましたの?わたくし途中からアニメと漫画の続きに気を取られてすっかり忘れておりましたけど…そろそろ宇宙が百回ぐらい消し炭になっていてもおかしくないのではなくて?
じ:そのことですが、お嬢さま、こちらを。
め:これは…魂ログですわね?どなたものですの?
じ:コージクンです。
め:…変ですわ。凡人の魂は死ねばすぐに輪廻の輪に加わりますから、ログが残るほどの活動は不可能のはずですわ。
じ:あのロボット自体が不可思議な存在なのです。ならば、何らかの関係があると思われるコージクンも、非凡な存在なのでしょう。
め:ふーん…で、これが何ですの?
じ:ログの中に、あのロボットとの交信記録が残っております。どうやら定期的に魂の状態でロボットに話しかけ、カルマ値を下げているようですな。
め:…へぇ…よっぽど、そのコージクンとやらが大切なのですわね…
じ:そのようでございます。
め:………推し…ということなのかしら。
じ:…は???
その後、末っ子女神さまにより「泣き虫」と名付けられたカイザーさまと、推しという概念を通して通じ合った女神さまは、どうにかして甲児さまとカイザーさまがハッピーエンドを迎えられるよう(女神さまはハピエン厨ですわ!)、試行錯誤を繰り返すこととなるのですわ~
ちなみに甲児さまは、本来なら別次元の宇宙神さまのお嫁さんになるところだったカイザーさまを略奪したので、その罰として主人公補正を剥奪されましたわ
甲児さまもカイザーさまが納得した上で嫁ぐのなら涙を呑んで身を引く覚悟でしたが、望まない婚約だったために、カイザーさまを助けようとしたのですわ
というネタを、またしてもこねくり回しますわ~
そのうち続編を書くかもしれませんわ~